Simcenter STAR-CCM+ 液膜の蒸発/凝縮解析のベストプラクティス

2024-06-18T07:38:44.000-0400
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サマリ

液膜の蒸発/凝縮解析は、熱力学的な設定が適切に選択されていないと、発散や浮動小数点例外エラーが発生しやすくなります。この記事は、問題を引き起こす可能性のある設定を特定し、解決することを目的としています。


詳細

このベストプラクティスは、家庭用電化製品の水/空気システムを対象として検証されたものです。多くの解析の収束性を改善できますが、すべてのアプリケーションに適用できるものではありません。 本記事で使用される記号: "✔": 常にこの設定を使用してください。ほとんどの液膜蒸発/凝縮のケースに有効です。 ”•”:状況によって有効ですが、検討する必要があります。
Mesh Considerations

液膜モデルは、シェル領域を使用します。シェルは境界から定義されるため、境界メッシュの品質が液膜の収束性を良くするための重要因子になります。

形状が複雑で、品質の悪い境界セルが避けられない場合、流体領域の「無効なセルを削除する」機能を使用して対処することができます。この機能によって、品質の悪いボリュームセルに隣接するシェルセルも自動的に削除されます。

また、液膜の蒸発/凝縮を考える場合、熱伝達は常に重要であり、流体-固体の熱連成(CHT)もよく考慮されます。CHT解析におけるメッシュのベストプラクティスでは、熱流束(および物質移動)を精度よく計算するため、y+の小さいメッシュが推奨されます。一方、計算時間を重視する場合、特に長時間のシミュレーション(数分、数時間)では、y+の大きいメッシュを使用したほうが良いです。収束性が向上しセル数も減少するため、妥当な結果を維持しながら実行時間を短縮することができます。


Physical Properties

液膜モデル及び設定

下図のように液膜モデルを選択します。

蒸発・凝縮を計算するため、多成分気体を使用する必要があります。ここでは空気とH2Oが選択されていますが、状況に応じて変更可能です。また、液膜はH2O(Water)を含む多成分液体を使用する必要があります。

✔ 安定化膜厚方程式を有効にします。

  • 大きい時間ステップサイズまたは定常計算の場合に必要です。
  • デメリットはありません。

✔ 液膜の最大厚さを適切な値に設定します。

  • デフォルト値の1mは大きすぎるため、安定性のために、最大液膜厚さの予測値を設定してください。
  • 最大液膜厚さを超えた液膜の質量は、警告なしに除外されます。
  • エッジ出口条件と異なり、除外された質量は直接追跡できません。
  • 液膜蒸発率のフィールド関数を使用して、蒸発率を直接追跡できます。

混相の相互作用モデル及び設定

✔ 蒸発/凝縮の不足緩和係数(URF) = 0.01 ~ 0.25に設定します(0.15)。

  • 大きい時間ステップサイズまたは定常計算の場合に必要です。
  • 凝縮速度は一般的にゆっくりと変化します。
  • エネルギーと蒸発の不足緩和係数が両方高いと、温度場の解が大きく振動する可能性があります。
  • 全体的な収束性を考えると、エネルギーの不足緩和係数を低くするよりも、蒸発の不足緩和係数を低くした方が効率的です。

● 核形成密度を 1e9~1e12 /m2 に設定します。

  • 膜が存在するか、核形成密度が高い場合のみ、凝縮が起こります。
  • 1e12 /m²はウェット壁面と同じ状態を意味します。

● 熱限界を有効にします。

● 蒸発または凝縮を無効にすると解析をさらに安定させることができますが、物理現象の忠実度を低下させてしまうため、無効化は必要ありません。

ソルバーの設定

✔ 分離型エネルギー(流体)の不足緩和係数を0.98~1の間に設定します。

  • 最初に蒸発/凝縮の不足緩和係数を[0.01 - 0.25]まで下げます。(上記参照)
  • それでも発散する場合は、不足緩和係数を0.9まで下げます。
  • 0.9より小さい値は、多くの内部反復が必要となるため、お勧めしません。

✔ 分離型エネルギー(固体)の不足緩和係数を0.99999に設定します。

  • デフォルト値の0.99は、多くのケースに対して保守的すぎます。各時間ステップ内で収束しない可能性が大きいです。

✔ 分離型化学種の不足緩和係数を分離型エネルギ(流体)と同じ値に設定します。

  • 正しいバランスを確保するために、通常推奨されます。

 

物性値

✔ 生成熱

  • 多成分気体中のH2Oの生成熱を0に設定します。
  • 液膜/多成分液体中のH2O(Water)の生成熱を潜熱に設定します。
      • 潜熱は液体-気体の生成熱の差です。
      • 水の潜熱 = -2240 kJ/kg

✔ 液膜/多成分液体中のH2O(液体成分)飽和圧力を Antoine または Wagner 方程式に設定します。

  • 水の場合、各パラメータがデフォルト値で問題ありません。
  • 温度が0℃を下回る可能性がある場合は、最小温度を下げてください。


Domain and Boundary Conditions

エッジ出口

 1つ以上のシェルエッジを「出口」に設定します。

  • 出口がないと液膜がエッジに蓄積し、計算不安定の原因となります。
  • 流出質量合計値を追跡する必要がある場合、質量流量レポート及び統計レポートを併用することでモニターできます。

入口はたは開放(圧力出口)境界における湿り空気条件

湿り空気条件に関して、環境の相対湿度で定義したい場合がよくあります。通常手作業で相対湿度から水蒸気の質量分率またはモル分率を算出して、設定する必要があります。

  • 添付のJavaマクロは'Env RH Mole Fraction Water'というパラメータを作成します。
    • このパラメータは、'RH_env'(相対湿度)と 'T_env'(環境温度) パラメータを使用し、H2Oのモル分率を算出します。
    • このパラメータは、T_env と一緒に入口または圧力出口の境界条件として使用します。

ウェット/ドライ壁面境界

用途によっては、壁面が常にウェットまたはドライ状態とみなされる場合があります。このような場合、膜厚を無視します。

  • 膜厚を考慮しないことで、数値的な安定性が増し、定常解析が可能になります。
  • 凝縮/蒸発速度を追跡するには、場の合計モニターまたは表面積分レポートを使用します。

ウェット壁面または水面のモデリング

ウェット壁面は、水たまりや自由水面を模擬するものです。壁面が乾燥しないため、膜厚を追跡する必要はありません。

  • 膜厚の最大値を低く設定します。(0.1 mm)
  • 最大値で膜厚を初期化します。
  • 壁面の物理条件の「壁面の化学種オプション」で「指定フラックス」を選択します。
    • 固体領域のないシミュレーションでは、インターフェースではない壁面境界を使用します。
    • 固体領域のあるシミュレーションでは、固体に接続されたインターフェース境界を使用します。
    • 最大膜厚を超えて流入する質量が除外されるため、化学種フラックスの値は重要ではありません。例えば 1g/m2s
    • 蒸発/凝縮速度に影響与えません。

凝縮またはドライ壁面境界

除湿用の冷却壁の多くは、液膜が排出されるように設計されています。壁面はほとんど乾燥状態か、水滴だけ壁面に残る状態になります。壁が常に露点以下に冷却される場合は、膜厚を考慮する必要がありません。

  • 膜厚 が0 で初期化します。
  • 壁を乾燥させるため、壁面の化学種フラックスを負の値に設定します(ウェット壁面を参照)。
  • 適切な熱条件を適用します。
  • ドライ壁での凝縮を計算するには、核形成密度が最も重要です。
    • 適切な値を使用するか、1e12 /m^2(ウェット壁面と同じ)に設定します。

Analysis Controls

過渡シミュレーションでは、各時間ステップで収束をチェックする必要があります。

液膜上の関数(温度、相対湿度、蒸発率など)モニターが漸近的に一定値に収束するはずです。図に示す例では、0.6秒時点で蒸発率がまだ変化途中ですが、1秒になると、完全に一定値に漸近していることが分かります。

上記多くの設定が時間ステップ内の収束に影響を与えます。最も重要なものを以下に挙げます。

  1. 時間ステップサイズ
  2. 流体エネルギーの残差
  3. 蒸発凝縮の残差
  4. 内部反復回数

良い妥協点が見つかるまで、いろいろ試してみてください。


Post-Processing

蒸発と凝縮が発生する主な原因は空気の相対湿度であります。相対湿度が100%以上では凝縮が発生します。

Simcenter STAR-CCM+の液膜モデルには、「湿り空気」という物質がないため、残念ながら相対湿度という関数が用意されていません。表示したい場合、ユーザーフィールド関数を作成する必要があります。

添付のJavaマクロは水蒸気分圧および相対湿度のフィールド関数を作成します。また、Antoine係数はグローバルパラメータを使用して設定されるので、異なる材料にも簡単に適用できます。

無次元の単位%も作成します。任意の値/関数に対して%表示できます。例えば、水蒸気の質量分率を0.01から1%に変換して表示できます。

既に説明されたように、このJavaマクロは境界条件で使用される'Env RH Mole Fraction Water'というパラメータも設定します。


Performance Considerations

このドキュメントで説明されている設定では、時間ステップサイズを0.2~2秒の間に設定し、安定した計算を実施可能です。

しかし、熱境界条件が変更したり、また解析の初期段階では、発速度が大きく変化するため、より小さな時間ステップサイズが必要になります。


KBアーティクルID# KB000132505_JA

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